引用元:おーぷん2ちゃんねる百物語2015 本スレ

149: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/20(金)17:37:08 ID:qVe
自分とヒナ(仮名)とケイ(仮名)の3人で涼を求めて山にドライブに出掛けた
そこは頂上にキャンプ場がある関係で、車で頂上まで登れる
目的はキャンプ場ではなくその手前の小さな沢なのだが

いい年した社会人が真夏の昼日中に3人揃って水遊びというのも切ない
釣り竿も一応持ってきていたが、渓流釣りは早々に諦めていた
しかも鬱蒼と茂った木のせいか、蚊も多い
それでも清涼な水の冷たさが気持ち良かった

ひとしきり涼を満喫してさあ帰ろうかという時、
プルルル……とケイの電話が鳴り始めた
「あ、もしもし母ちゃん?」
3人して車に戻りながら、ケイが話している
あ、ここ電波入るんだ。頂上なら入るのは知ってたけど
そう思って自分の携帯を取り出すが、表示は『圏外』になっていた
ケイとはキャリアが違うからかな?
もしくは自分のガラケーとケイのスマホで何か違うんだろうか
呑気にそう考える自分と違って、ケイと同じキャリア、同じ機種のヒナが青くなる
「ケイ、電話切って!」
「え?」
ケイが耳元から電話を離した次の瞬間、

『ヒヒヒヒッ』

携帯から不気味な笑い声が響いて、「うわっ」と叫んだケイの手から携帯が落ちる
そのまま誰も動けずに、落ちた携帯をじっと見ていた
やがて意を決したケイが、恐る恐る携帯を拾い上げる
携帯は液晶画面が割れ、電源が落ちていた
3人して押し黙っているせいか、やけに蝉の声が大きく感じられた。
暑かった太陽の熱気が、今は重く、ねっとりとまとわりつくようだった
3人して顔を見合わせ、ケイが電源を入れる
……電源が入る一瞬、画面の中に白っぽい人影が見えたのは気のせいだろうか
画面の表示は『圏外』。
ケイの着信履歴は、遊びに誘ったヒナからの着信が最後になっていた

逃げるように山を降り、ケイはその足で携帯を変えに行った
今でもたまに3人で遊ぶのだが、誰もあの山には近付こうとしない


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